製造業界では、少子高齢化に伴う労働力不足にともない、生産の省力化と効率化が課題となっています。また国外に目を向けると、グローバリゼーションが進む一方、米中対立、英国のEU離脱といった保護主義の高まりにより、生産管理や販売計画に対してより一層のリスク管理が求められています。
こうした2つの大きな課題を抱える製造業にとって、課題解決の方法として注目を集めているのがAI(Artificial Intelligence:人工知能)を活用した生産管理です。そこで本記事では、AIが持つ特徴や製造業における活用方法などをご紹介します。
製造業で導入が進むAI
人手不足やグローバル競争の激化が加速する現在、AIは製造業社の活路を見出すソリューションとして期待されています。 従業員の作業効率化、製品の品質工場、および工場の安全稼働サポートなど、その応用範囲は幅広く、工場稼働の省力化に大きく貢献します。
では、製造業でどのようにAIが活用されるのか、具体的な例をみていきましょう。
予知メンテナンス
設備メンテナンス業務は、これまで特定の熟練者の勘や経験に頼っている部分が多くありました。しかし人手不足が加速する現在、AI技術を設備や機器の異常検知や予兆検知に応用する動きが加速しています。
AIの強みは精度の高い「予知メンテナンス」を実行できることです。従来の予防を目的としたメンテナンスでは、必要かどうかに関わらず、予め設定されたスケジュールでメンテナンス作業が行われていました。一方、AIによる予知メンテナンスでは、稼働中の機器や設備の状態を評価し、メンテナンス時期の予測や故障の予兆を検知します。こうして、必要な時期と対象設備を絞り込むことにより、メンテナンスのコストを下げ、効率を向上することが可能となるのです。
これまでも、機械や設備の異常を振動や音で検知する予兆検知という概念はありましたが、その作業は熟練技術者の経験やノウハウに頼るところが大きいものでした。しかしAIを利用すれば、熟練技術者と同等の精度で検知できるだけではなく、常時監視や自動化も可能になるため、設備管理の効率を大きく向上します。
品質管理
日本の製造業は人手不足という大きな課題に直面しており、品質管理に時間と人を十分にかけることが難しくなっています。また、製品の品質管理は依然として熟練工の経験やノウハウに依存していることも多く、2025年問題を控える現在、製造業各社にとって品質管理の自動化や効率化が大きな課題となっています。そうした中、注目を集めているのがAIの活用です。
たとえばオプティムのAIソリューションでは、製造機械に取付けられたセンサーがさまざまなデータを取得し、それらを集約してAIで解析。専門家でも気づきにくい異常を検知することで、品質管理の自動化を実現します。 精度の高い分析が自動的に実行されることで、常に高いレベルの品質を維持することが可能になります。
また、生産ラインの稼働データなどを常に自動収集し、それらをAIで解析させることで生産工程に潜んだムダを「見える化」し、適切な作業指示に結びつけることで、熟練技術者に依存することなく誰でも効率よく作業できる環境構築も実現することが可能になります。
生産や販売の計画
AIの活用は生産現場のみに限定されません。AIは製造サプライチェーンの最適化や、市場環境の変化の予測と行った、戦略策定にも幅広く活用することができます。たとえば、消費者行動やマクロ経済的要因、地理的要因、社会情勢的要因、地理的要因、天候要因といった膨大な要素データを人間が分析して、的確な戦略を策定することは限りなく膨大な時間と労力を必要とします。一方で、AIを利用すれば、膨大なデータを高速かつ高精度に分析し、市場の需要予測をある程度定式化することが可能となります。
生産性を高めるためにAIの利活用を
本記事では、AIの活用が期待される分野として「予知メンテナンス」「品質管理」「生産や販売の計画」という3つの観点で簡単にご紹介しました。
公益財団法人 日本生産性本部の「労働生産性の国際比較 2018」の発表によると、日本の時間あたり労働生産性(=付加価値生産性)はOECD加盟35カ国中20位。G7の中で最下位です。※1
こうした現状も踏まえ、AIの導入は日本の製造業が直面する2つの課題である「人手不足」と「グローバル競争の激化」を解決するソリューションとして大きく期待されます。
公益財団法人 日本生産性本部 労働生産性の国際2018
https://www.jpc-net.jp/intl_comparison/