AIのビジネス導入―費用対効果、PoC、導入の流れを簡単に解説

AIのビジネス導入――費用対効果、PoC、導入の流れを簡単に解説

近年ではAIのビジネス導入が注目されていますが、実際に活用できている例はまだ少ないといえます。矢野経済研究所が2018年7月~10月の期間で、国内の民間企業515社に対して実施した法人アンケート調査では、現時点でAIを「すでに導入している」と回答した比率は全体で2.9%、「実証実験(PoC)を行っている」という回答は5.8%で、導入済と合わせても8.7%でした。しかしその一方で、「今後も取り組む予定はない」という回答は15.0%に留まっているのもまた事実です。「すでに導入している」「実証実験(PoC)を行っている」のほか、「過去に検討・導入したが現在は取り組んでいない」(1.2%)、「利用に向けて検討を進めている」(11.5%)、「これから検討をする予定である」(11.5%)、「関心はあるがまだ特に予定はない」(52.2%)など、何らかの形でAI分野への関心自体は高いことが伺えます。 このように、AIへの関心が高いものの、まだ導入率が低い背景には、「本当に費用対効果があるの?」「どのように導入すればいいか分からない」といった課題が挙げられます。そこで本記事では、AIのビジネス導入を進める上での費用対効果や流れなどをご紹介します。

※出所:(株)矢野経済研究所「業種別AIの導入状況に関する法人アンケート調査(2018年)」2018年12月13日発表
注:郵送によるアンケート調査、単数回答

事前に目的や課題などを明確化しておく

近年では、実にさまざまなビジネス領域でAI活用の注目度が高まっています。注目を浴びている背景には、AI自体のビジネスに対する有用性が認識され始めたことに加えて、高速かつ安定したブロードバンド環境の普及、ハードウェアやソフトウェアの飛躍的な技術革新などの環境的な要因、そしてビジネスのデジタルトランスフォーメーションが進むことでAIの学習や分析に必要な大量のデータが用意しやすい、といった側面もあるでしょう。

AIが人間より優れている点のひとつに、膨大なデータを短時間で処理できることが挙げられます。人間が対応すると膨大な時間がかかってしまう作業もAIなら瞬時に完了できるなど、従来とは異なる視点からビジネスアイデアを実現できる、数多くの可能性が秘められているのです。画像・映像解析、リアルタイム翻訳、需要予測、チャットボット対応といったように、すでにビジネスとして実用化されているものもあります。

しかし、全体的に見るとAIを導入・利活用している企業の割合はまだ少なく、大半の企業はAIがもたらすメリットに気付いていません。その理由のひとつとしては、ビジネスの課題と、その課題を解決できるAI技術のマッチングができていないからだと考えられます。AIを有効活用するには技術の知識だけでなく、課題の抽出が非常に重要となります。AIは万能だと思われがちですが、決して“魔法のツール”ではありません。また、AIはこれまで人間が行ってきた業務をリプレースするよりも、人間の仕事をサポートするという役割の方が適しているため、導入する際は事前にその目的や課題などを明確にしておくことが求められます。 AIをどのように自社のビジネスに役立てられるかについては、以前の記事「AIで“できること”と“できない”こと ― 自社のビジネスにもAIを活用できる?」も参考にしてみてください。

算出が難しいAI活用の費用対効果

続いては、AI活用でどれくらいの費用対効果が得られるのかを見ていきましょう。

現段階では、AIの導入前後でどれくらいROI(Return On Investment:投資利益率)に違いが生じるのかが分からない、という企業も多いと思います。実際、まだPoC(Proof of Concept:概念実証)のフェーズに位置付けられるソリューションが数多く存在しているのが現状です。

こうした動向は、大手コンサルティング会社の米McKinsey&Companyが2017年6月に発表したレポート「ARTIFICIAL INTELLIGENCE THE NEXT DIGITAL FRONTIER?」でも見てとれます。同レポートの調査対象は、世界10ヶ国14部門のAIに精通した経営幹部3000人で、これによると現在AI関連の技術を大規模に、あるいは事業の中核に使用していると答えたのは20%。そして160以上のユースケースを見ても、AIが商業的に展開されたのは12%という結果になっています。多くの企業はビジネスケースや投資収益率について確信が持てないと述べている点から、現時点ではAI活用による明確な費用対効果の算出は難しいといえるでしょう。ただし、AI導入によるROIが決して低いというわけではありません。中小企業がAIを導入しづらい理由のひとつに「ROIの低さや不確実さ」が挙げられますが、すでに積極的なAI戦略を導入しているような企業の中には、高いROIを実現しているケースもあるのです。

AI活用時のROIを考える上では、どのような点にメリットがあるかを十分に理解する必要があります。AIは実に幅広い領域で活用できるため、たとえば「AIを使った業務改善・コスト削減によるROI」や「新しい価値を生み出したROI」など、その活用方法に応じて考えてみてください。また、継続的な学習によって作業効率や成果物の精度が高まるソリューションもあることから、こうしたケースでは長期的な視点で考える必要が出てきます。

AI活用では「PoC」が重要

企業が新しいビジネスへ取り組むにあたり、検証やデモンストレーションを行うための「PoC」。PoCのメリットは、本導入の前につまずきやすいポイントが明確化できる、本導入で膨大なコストを費やす前に小規模で試すことができる、といった点が挙げられます。AI活用はまだ新しい概念であり、企業内にまだノウハウが蓄積されていない、予想外のトラブルが発生する可能性が否定できないなど、企業にとって未知数の部分もあるため、このPoCが特に重要な役割を担ってくるのです。

すでにAI活用の取り組みを進めている企業の中には、PoCで良い結果を得られなかったというケースがあるかもしれません。原因としては、AIに対する認識や技術力の不足、学習データをはじめとする材料の不足、目標値の設定ミスなどが挙げられるでしょう。また、たとえPoC自体の結果が良好でも、運用コストが高すぎる、利用方法が複雑すぎる、企業の求める精度に達していなかった、などの理由が考えられます。しかし、こうした取り組みは決して無駄ではありません。AI活用は多くの企業にとって未知の部分が多いため、失敗も成果のひとつと捉えて、PDCAサイクルを回すことが重要です。

さらに、PoCの結果が良好でも油断は禁物です。PoCから実運用に切り替える際は、たとえばサーバやネットワークの負荷といったインフラ周りへの配慮だけでなく、運用やトラブル発生時の対応など、従来のビジネスよりも想定範囲を広げた対策を講じておくと良いでしょう。

AI活用では「PoC」が重要

AI活用の実現に向けた主な流れ

それでは、実際にAI活用を進めるには、どのようなステップが最適といえるのでしょうか。今回は参考までに、オプティムがお客様へご提案している主な流れをご紹介しましょう。

  • ステップ 1

    プロジェクトプランニング

    まず必要となるのが、AI活用プロジェクト全体のプランニングです。多くの企業ではAI活用に関する実績がないため、この段階でつまづいてしまうことも多いといえます。そこでオプティムでは、AI関連の知識・技術に長けた専門家が、戦略立案から実行計画まで、お客様のビジネスゴールに合わせた提案を行っています。

  • ステップ 2

    実証フェーズ(目安:1~3ヶ月)

    プランニングが終わったら、続いては既存データまたは手動で取得したデータセットをもとに、ミニマムな規模で仮説検証を実施します。この実証フェーズでPDCAを回しつつ、想定目標へどれだけ近づけられるかが、成功への大きなカギを握っています。

  • ステップ 3

    フィールド検証(目安:1~3ヶ月)

    ミニマムな規模の実証フェーズで成果が得られたら、より実運用に近いフィールド検証へと移行します。ここでは、推論エンジンをIoT機器と連携し、フィールドで数サイクル実施。数サイクルの再学習により、一定の推論精度と対環境依存性を担保します。

  • ステップ 4

    製品導入

    フィールド検証を終えたら、いよいよ製品の導入段階です。ソフトウェアの設定はもちろん、ハードウェアの設置や実務オペレーションの策定も実施します。

  • ステップ 5

    運用

    AIは学習によって精度が向上するため、運用も非常に重要なポイントです。反復的に再学習を実施することで、推論精度および対環境依存性の維持・向上を行います。

パイオニアと成り得るいまこそが最大のビジネスチャンス

このように、ビジネスへのAI活用は大きな注目を浴びつつも、実際に取り組めている企業がまだ少ない状況です。しかし一方で、AIは非常に大きな可能性を秘めている分野であり、パイオニアと成り得るいまこそが最大のビジネスチャンスともいえるでしょう。特に最近では、AIの学習フェーズを短縮できる「学習済みモデル」を搭載している製品もあります。こうした製品を利用することで、導入コストを下げつつ、さらに早く費用対効果を出すことも可能です。

そこでまずは、アイデアベースでも構わないので、実際にAIソリューションを提供している専門家に相談してみてください。ふとした思い付きが、企業のビジネスを変える大きな原動力となる可能性もあるのですから。

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