AIが小売業を変える3つのソリューション ― AIによる販促支援から需要予測まで

AIが小売業を変える3つのソリューション ― AIによる販促支援から需要予測まで

小売業界では、少子高齢化に伴う労働力人口不足に加えて、経験や勘に頼る属人化した発注業務、そして利益率向上のための経費削減などが課題となっています。こうした小売業の救世主として、いま大きな注目を集めているのが「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」です。そこで本記事では、AIが持つ特徴や小売業における活用方法などをご紹介します。

人間の仕事をサポートするAI(人工知能)

 それではまず、「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」がどのようなものかについて見ていきましょう。
 ごく簡単に説明すると、AIは人間の脳が備えている知的能力をコンピュータシステムによって再現したもの、といえます。従来のコンピュータシステムは、事前に人間が作成したプログラムの指示通りに処理を行う、あくまでも“機械”の域を出ないものでした。しかしAIでは、事象の認識から分析、判断、学習、予測などまでを自律的に行うことが可能です。

 近年、AIが大幅な成長を遂げる要因のひとつになったのが、学習方法の変化です。旧来のAIは、人間の知的能力を模してはいるものの、自らの力のみで判断することが困難でした。そこで、AIにおける研究分野のひとつとして登場した「機械学習(Machine Learning)」では、事前に人間が設定したアルゴリズムを基に、データの解析結果から規則性やルールを見つけ出し、判断や予測の材料とすることが可能になったのです。さらに、機械学習から一歩進んだのが、脳科学の研究成果「ニューラルネットワーク」を基盤とした「深層学習(Deep Learning)」です。機械学習の場合、人間による事前の設定が必要不可欠でしたが、深層学習はデータの分類や認識の基準を事前に人間が指示しなくても、一定量のデータがあればそこから自律的に学習することが可能となっています。これにより、処理時間の短縮や、設定にかかる手間の削減につながるわけです。

 こうしたAIの進化は、人々の生活の中だけでなく、ビジネスの世界にも多大な恩恵をもたらしてくれます。たとえば、膨大なデータの中から経営判断の鍵となる情報を見つけ出すには、これまで人間が各種ツールを使ってさまざまな切り口から分析していくしかなく、多くの手間と時間を要していました。しかし、こうした煩雑な作業もAIを活用することで、短時間に必要な情報を得られるようになります。しかもAIは、人間が言葉で定義するのが難しいような処理にも使えるほか、時として人間が思いつかないような切り口からの分析結果をもたらしてくれるのです。こうした処理が行えるAIは、企業がビジネスを進める上で非常に心強いパートナーといえるでしょう。

小売業界で急激に加速するAI活用

 2017年10月に米MarketsandMarketsが発表した「小売業向けAIの世界市場の予測 ~2022年:機械学習&ディープラーニング・NLP」によると、ワールドワイドにおける小売業向けAIの市場はCAGR(年間複合成長率)38.3%で推移し、2017年の9億9360万米ドルから、2022年には50億3400万米ドルの規模にまで成長すると予測されています。こうした需要増加の背景には、実店舗でのより高度な監視・モニタリング機能の必要性拡大、業界内におけるAIに対する認識の向上と導入の拡大、ユーザーエクスペリエンスの向上、生産性の向上、RoIの上昇、予測精度向上による在庫の適正化、サプライチェーンの最適化など、実にさまざまな要因が関係しているといいます。

 現在、少子高齢化に伴い労働力人口不足が加速している日本。こうした背景から、優秀な労働力の確保と同時に、いかに業務を効率化し、生産性向上が図れるかは、企業の命題となっています。特に小売業においては、多くの手間や時間を要し、なおかつ経験や勘に頼る属人化した業務が数多く存在しているのです。

 たとえば小売店において、課題が多いとされる業務のひとつに、商品の発注作業が挙げられます。商品を発注する際は、売れ行きに応じて最適在庫を保つための需要予測を行う必要がありますが、これまでその多くは人間の経験や勘に頼ったものでした。また、POSデータなどから分析を行おうとしても、天候や各種キャンペーンなどさまざまな外的要因が複雑に絡み合い、なかなか思い通りの結果が出るとは限りません。多くの手間暇をかけながら「予想よりも売れ行きが悪かった」「普段よりも需要が急増した」といった経験がある方も多いのではないでしょうか。しかも小売店では膨大な種類の商品を取り扱うことに加え、消費期限の短い食料品などが含まれた場合、その苦労はより大きくなります。

 こうした日本の小売業が抱える課題を、スマートに解決してくれるのがAIです。実際に日本の小売業でも、大手企業を中心としてAI活用を進める動きが活発化しています。

実際に何ができる? 小売業におけるAIの活用例

 それではここから、AI活用によって小売業の業務がどのように改善できるのか、その一例をご紹介しましょう。

AIを使った需要予測で発注作業時間削減

 小売店において商品の発注作業は、非常に多くの手間と時間を要し、なおかつ経験や勘が必要とされる、難しい業務のひとつです。そこでコンビニエンスストア大手のローソンでは、2015年から全店舗で「セミオート発注システム」を導入しています。同システムは、過去の販売実績や当日の天候などを踏まえて、AIが最適な商品の数を算出してくれるというもの。発注担当者はAIによって算出された商品の数量を確認し、ワンボタンで発注が行えます。これにより、発注作業にかかる手間や時間が大幅に削減されたほか、商品切れによる機会損失や廃棄商品の減少を実現しました。

 こうした動きは、1社だけにとどまりません。セブン&アイ・ホールディングスグループのイトーヨーカ堂でも、2019年度に全店舗でAIの需要予測に基づく発注システムの導入を計画しているなど、小売業全体での大きなムーブメントを生み出しています。

カメラ映像を解析して、お客様の行動分析する

 店舗を訪れると、出入り口や陳列棚が見渡せる位置に設置されているカメラ。このカメラは従来、大半が防犯の用途で設置されていましたが、近年では顧客の行動分析に用いる動きも活発化しています。この行動分析で、極めて大きな役割を担っているのがAIです。たとえば、店舗内に設置されたカメラの映像を、人間の目で監視し続けることは現実的に不可能といえるでしょう。また、それを行動分析用にデータ化するのも極めて困難な作業です。しかしAIを使えば、映像データから自動で顧客を認識し、店内でどのような導線を辿りながら、購買行動をとっているかがデータとして把握できます。確かにPOSデータを使えば、各商品に関して時間や曜日ごとの販売数は分かりますが、顧客が「最初から目的の商品を決めている」のか、「ポップなどを見て衝動的に購入しているのか」といった部分までは読み取れません。AIによる映像認識と解析は、こうした顧客の心理的な側面まで含めて可視化することができ、店舗内の導線作りや商品レイアウト、プロモーション活動などに幅広く役立てることが可能なのです。

 なお、AIを用いた画像・映像解析については、「AI画像解析 ― 人工知能を使った画像解析と映像解析でできること」で解説していますので、こちらも併せてご覧ください。

混雑度を分析しリアルタイムプロモーションに活用

 顧客が小売店へ買い物に行く時、気になる要素のひとつが店舗の混雑状況です。店舗として大勢の顧客が訪れてくれるのは嬉しい反面、「店内がいつも混んでいるから行きづらい」「レジが混雑していて並ぶのが嫌」など、混雑度が高すぎると機会損失につながってしまうケースもあります。AIは、こうした状況の緩和にも貢献してくれるのです。AIを使うと、店内に設置したカメラの映像データから自動で顧客を認識し、全体から各コーナーまで混雑状況を可視化することができます。この情報から混雑予測が立てられることに加え、この混雑状況を顧客に対してアプリやSNSなどでリアルタイムに通知すれば、混雑が少ない時間帯を埋めるプロモーション活動にも役立てられます。また、混雑状況の可視化は店舗内だけでなく、駐車場に対しても有効です。駐車場に十分な広さがない店舗では、特に大きな効果を発揮するといえるでしょう。

 AIを用いた映像解析は、飲食店の空席を検知することもできます。飲食店にとって、空席ができることは売上の減少に加え、食材や人件費のロスなどを招く深刻な問題です。しかし、AIを使うと小売店と同様に、こうした問題解決に大きく貢献しますし、顧客にとっても待ち時間なしで快適に飲食が楽しめるようになり、顧客満足度の向上にもつながります。

画像解析とAIを使った空席検知
AIによる画像解析で空席を検知

 そのほか、AIを使うとカメラ映像から顧客の性別や年齢などまで推定することもできます。こうした情報を使い、たとえば20代女性の顧客が増えたら周辺フロアのデジタルサイネージに化粧品の広告を表示させる、といったプロモーションも可能です。

実際にAI活用をはじめるには? 「AIを使ってなにがしたいか」からスタート

 小売業でAIを導入する場合、非常に応用範囲が広いため、まず「AIを使ってなにがしたいか」を決めることが重要といえるでしょう。その目的に応じて、各種システムの仕様からネットワークカメラなどのハードウェアまで、求められるものが異なってきます。また、AI活用は幅広い分野の知見やノウハウが必要になるため、自社内でハードウェアの調達から各種システム開発まですべてを手掛けるのは極めて困難です。そこでまずは、小売業向けのAIソリューションと活用事例を持っている専門家に相談してみることをお勧めします。

 本記事の中でご紹介したように、AIは今後の小売業を大きく変える力を持っています。労働力の確保はもちろん、業務の大幅な効率化、人間では収集できなかったデータの分析による新しい戦略立案、これまで経験や勘などに頼らざるを得なかった属人化した業務からの脱却などまで、さまざまな課題を解決してくれる、まさに救世主的な存在といえるのです。小売業におけるAI活用がどのように進んでいくのか、今後もその動向にぜひ注目してみてください。

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